東京高等裁判所 昭和37年(ネ)985号・昭37年(ネ)979号 判決
第一審原告 日東工業株式会社
第一審被告 コロナ燃焼工業株式会社 外一名
〔抄 録〕
一、右事実によつて考えると、右のように仮差押決定の送達の日である昭和三一年六月二八日から控訴審判決のあつた昭和三四年一〇月二八日まで原告はその転付債権の取立を禁ぜられ、その反面第三債務者はその支払を禁ぜられ、そのため、原告がその間右転付債権の行使を妨げられたことは明かである。よつて右取立並びに支払の差止めにより、原告が原告主張の様に損害を蒙つたか否かについて考えて見る。
一般に売買契約にあつては、代金支払につき期限があるとき又は利息についての特約があるとき等を除いては、買主は売買の目的物の引渡までは代金利息を払うことを要せず、引渡の日から代金の利息を支払う義務を負うものとされ、この利息は民法第五七五条第二項の規定により当然生ずる法定利息と解すべく(昭和六年五月一三日大審院判決参照)、右利息は、代金の支払の遅滞が買主たる債務者の責に帰すべき事由に基くと否とにかゝわらず発生するものというべきである、そして売主がこの法定利息の支払を受けるほかに更に重ねて同じ期間に応ずる遅延損害金の支払を受けることのできないことは、当然である。
本件の場合について見るに、原判決添付別紙(二)差押債権目録記載三の差押債権は売買代金債権であるから(この点については当事者間に争がない。)売買の目的物の引渡以後は法定利息を生じ、この法定利息は前記仮差押及び仮執行停止によつて生じた売買代金の支払の遅延によつて発生を妨げられるものではないから、この法定利息の支払をも受けることができなくなつたような特段の事由の主張立証がない本件においては、少くとも売買物件の引渡の日(本件ではその時期は明らかでない。)以後は、右売買代金債権の債権者である原告は被告のなした前記仮差押及び仮執行の停止による代金の支払の遅延によつて代金に対する年六分の割合による金員に相当する損害を被つたものとなすことはできない。なお売買の目的物引渡前の期間については、引渡前から代金の利息の支払を受けることができるような特段の事由たとえば代金支払の期限、利息の特約等は原告の主張立証しないところであるから、原告はその期間に対応する利息債権を失つたということのできないことは当然である。結局、原告は前記仮差押等により前記売買代金債権の行使を妨げられたことによつては、代金に対する年六分の割合による損害を被るに至らず、何等の損害賠償請求権を取得すべき立場になかつたものといわなければならない。
二、原告は前記被告コロナのなした仮差押期間中、仮差押決定、強制執行停止決定という法律上の障害により右債権の行使が不可能であつたから、右期間中時効期間が進行せず、従つて消滅時効にかゝるいわれがない旨主張するが、債権者が債務者の第三債務者に対する債権を差押えてもその差押を以て差押えられた債権についての時効の中断又は停止の事由とする旨の規定はないのであるから、原告の右主張の理由のないことは多言を要しないところである(大正十年一月二十六日大審院判決参照)。
(小沢 池田 賀集)